キャンパる編集長日記

2009年6月5日金曜日

「神奈川大学評論」の亀山、吉岡対談

 キャンパる編集部には、大学から、さまざまなプレス発表資料や、大学新聞などが送られてくる。
その中で「神奈川大学評論」第62号(2009年3月末発行)に、興味深い対談が掲載されていた。

 ドストエフスキーの小説の翻訳などで知られる亀山郁夫氏(東京外国語大学長)と、ノンフィクション作家・吉岡忍氏の対談「同時代の運命を生きる文学 カタストロフと人間をめぐって」である。

 これはこの本の特集「世界 同時代の文学」の巻頭を飾る対談である。

 この中で、亀山氏は、スターリン時代のロシアの芸術家を研究してきたら、彼らが、弾圧や死をおそれず権力に反抗したというのでなく、その時代に生きていくため権力との共生を図ってきたことに気づいたと言う。
 
 「たとえスターリン主義が悪であろうと、そのスターリン主義と和解し、共生していこうという知恵、和解の視線が生まれるんですね。それが生存の条件である以上、逆にそれなしで、ほんとうの芸術の豊かさは生まれない」
 と亀山氏は語る。

 生き延びるために独裁政権と妥協をしながらも、芸術家としての守るべきものを守り、同時代、同じ社会を生きるものとして表現していく、ということだろうか。

 これに対し、吉岡氏は、1991年にロシアでクーデターが起こったとき、クーデター側のメッセージを伝える女性アナウンサーが、わざと地味な服装をして、目線を上げずに、淡々と読み上げたことを紹介している。

吉岡氏があとでその女性と会って話したら
、「原稿を読めといわれたときに、とっさに事務員だったか、掃除のおばさんだったかのカーディガンを借りたんです」
と話したそおうだ。彼女も、クーデター側の権力にさからわないふりをしながら、その服装や姿勢で反抗の思いを伝えていたわけだ。

 まだこれは、座談会の最初のほうで、こんな話をはさみながら、34ページにわたる熱い対談を繰り広げている。
 
 大学の評論誌の意欲的な試みを買いたい。